― 散歩、朝食、歯みがき、日光、挨拶、小さな予定 ―
「これからの時間をひらく、日々の習慣」第6回
このところ、40度を超える暑さのニュースを耳にする日が増えました。
暑い時間を避けるため、私は朝5時半ごろ河川敷公園へ行き、5キロほど歩いています。
公園に着くころには、すでに多くの人が歩いたり、走ったり、犬の散歩をしたりしています。最近、小型犬のためのドッグランが設けられ、朝早くから人と犬が集まり、にぎやかになりました。
川から届く少しひんやりとした空気。
草木を照らし始める朝の光。
すれ違う人との短い挨拶。
歩き終えて家に戻ると、その日一日を少し穏やかに過ごせるように感じます。
朝には、私たちの体と心を整えるための、小さなきっかけがいくつも隠れているのかもしれません。
今回は、特別な朝活を始めるのではなく、明日の朝から一つだけ試せる「朝習慣」を考えてみたいと思います。
朝は、一日の方向を決める時間
私たちの体には、およそ24時間の周期で眠気、体温、ホルモン分泌などを調整する「体内時計」があります。
ただし、人の体内時計は、何もしなくても毎日正確に24時間を刻むわけではありません。
そのずれを整える重要な手がかりの一つが、朝の光です。
厚生労働省の睡眠情報では、朝に浴びる光には体内時計を早める方向へ調整する作用があり、起床後から午前中に光を浴びることが勧められています。朝起きたらカーテンを開け、自然光を室内へ取り込むだけでも、一日の始まりを体に知らせる助けになります。
朝の光は、気持ちを無理に明るくする魔法ではありません。
けれども、朝と夜の区別を体に伝え、昼間の覚醒と夜の眠りを整える土台になります。
朝を整えることは、夜の眠りを準備することでもあるのです。
朝の散歩には、いくつもの習慣が重なっている
朝の散歩は、歩くことだけではありません。
光を浴びる。
体を動かす。
外の空気に触れる。
季節の変化を見る。
人とすれ違う。
一日の始まりを感じる。
こうして考えると、朝の散歩には、体と心を整える要素がいくつも重なっています。
身体活動は、筋力や体力を守るだけでなく、生活習慣病の予防や、長時間座り続けることによる健康への影響を減らすためにも大切です。厚生労働省の身体活動・運動ガイドでも、特別な運動だけでなく、日常生活の中で今より少しでも多く体を動かすことが勧められています。
ただし、朝でなければ効果がないわけではありません。
朝が苦手な人、夜勤のある人、体調によって起床時間が変わる人もいます。大切なのは、無理に早起きを競うことではなく、自分の生活に合う時間に体を動かすことです。
朝の時間が自分に合う人にとっては、散歩が一日のよい入口になる、というくらいに考えるのがよいでしょう。
暑い日の「早朝なら大丈夫」には注意する
暑い季節には、朝早く歩くことは、日中の強い暑さを避ける一つの方法です。
それでも、早朝だから必ず安全とは限りません。
前日の熱が残っていたり、湿度が高かったりすると、朝でも熱中症の危険があります。気温だけでなく、湿度や日差しなどを含めた「暑さ指数・WBGT」を確認することが大切です。
環境省の基準では、暑さ指数が31以上では運動は原則中止、28以上31未満では激しい運動を避け、こまめな休憩と水分・塩分補給が必要とされています。
朝歩く日は、出発前に水分をとる。
飲み物を持つ。
日陰のある道を選ぶ。
距離を短くする。
体調がいつもと違えば休む。
「毎日5キロ歩かなければならない」と考えず、暑い日は1キロでも、家の周りを少し歩くだけでもよいと思います。
続けるためには、やめる判断も習慣の一部です。
朝食は、体を動かし始める合図
朝食は、空腹を満たすだけのものではありません。
朝の光とともに食事をとることは、体内時計や生活リズムを整える助けになると考えられています。農林水産省も、朝食には栄養を補給し、頭と体を目覚めさせ、一日の生活リズムを整える役割があると紹介しています。
ただし、朝から立派な献立を整える必要はありません。
ご飯とみそ汁。
パンと卵。
ヨーグルトと果物。
牛乳や豆乳とバナナ。
主食に、たんぱく質を含む食品や野菜、果物などを少し組み合わせるだけでもよいでしょう。
食欲がない人は、最初から量を求めず、水分をとり、食べられるものを少し口にするところから始めます。
朝食も、完璧さより、体に「今日が始まった」と伝える小さな習慣として考えてみます。
歯みがきは、朝の自分を整える時間
朝の歯みがきも、一日の始まりを区切る習慣です。
口の中を清潔にすることはもちろんですが、鏡を見て、歯肉の腫れ、出血、口の乾き、舌や口の中の変化に気づく時間にもなります。
前回の口腔ケアの記事で考えたように、口を整えることは、これからも食べ、話し、笑う力を守ることです。
朝食、歯みがき、身支度を一つの流れにすると、毎日の口腔ケアも続けやすくなります。
忙しい朝には、すべてを完璧に行わなくても構いません。
まずは丁寧に歯を磨く。
歯間ブラシやフロスは、落ち着いてできる時間に行う。
自分の暮らしに合う形を選ぶことが、長く続ける秘けつです。
挨拶は、短くても人とつながる
朝の公園では、名前を知らない人とも「おはようございます」と言葉を交わすことがあります。
ほんの数秒の挨拶です。
けれども、自分以外の人も同じ朝を迎え、同じ場所で歩いていると感じることができます。
毎日深い付き合いをする必要はありません。
近所の人。
散歩ですれ違う人。
犬を連れた人。
店を開ける人。
短い挨拶や会釈も、暮らしの中にある細いつながりです。
挨拶を交わさない日があっても構いません。人との距離には、その人に合う形があります。
それでも、無理のない範囲で誰かと言葉を交わすことは、一日を社会へ開いていく小さな入口になるように思います。
朝に「小さな予定」を一つ置く
生きがいの記事では、心に小さな灯りがともり、明日へ続くものがあることの大切さを考えました。
朝には、その日の小さな予定を一つだけ置いてみます。
花に水をやる。
図書館へ本を返す。
友人に短い連絡をする。
読みかけの本を10分読む。
夕食に食べたい物を考える。
ブログを一段落だけ書く。
予定は、大きな目標でなくて構いません。
小さな予定が一つあると、その日の時間にわずかな方向が生まれます。
できなかったとしても、失敗ではありません。次の日へ移しても、やめてもよいのです。
予定に縛られるのではなく、今日という時間を少しだけ前へ開くための目印として使います。
朝のすべてを行わなくてもよい
朝の光を浴びる。
少し体を動かす。
朝食をとる。
歯を磨く。
挨拶をする。
小さな予定を持つ。
こうして並べると、全部しなければならないように見えるかもしれません。
けれども、このシリーズで大切にしたいのは、完璧な生活ではありません。
明日は、カーテンを開けるだけでもよい。
玄関の外へ出て、空を見るだけでもよい。
コップ一杯の水を飲むだけでもよい。
散歩を5メートルだけ始めてもよい。
朝は、昨日できなかったことを責める時間ではなく、もう一度始められる時間です。
朝の光の中で、体を少し動かし、口を整え、誰かと短い言葉を交わし、今日の小さな予定を一つ持つ。
その積み重ねが、未来の自分を静かに支えてくれるのかもしれません。
明日の朝、まずカーテンを開けるところから始めてみませんか。
そこから、これからの時間が、ほんの少しひらいていくかもしれません。
これからの時間をひらく、日々の習慣シリーズ
これからの時間を自分らしく、意欲を持って歩んでいくために、日々の暮らしの中でできる小さな習慣を考えるシリーズです。
お酒との距離、歩く力、口腔ケア、生きがい、朝の過ごし方などを通して、体と心、そして人とのつながりを整えていきます。
完璧な生活を目指すのではありません。
今の自分にできることを一つ見つけ、できなかった日があっても、また戻ってくる。
その小さな積み重ねが、これからの時間をひらいていくのだと思います。
「これからの時間をひらく、日々の習慣」シリーズ
第1回『健康を整え、意欲をそだて、もう一度開いていくために』 ー人生後半の旅を支えるために、お酒・タバコ、運動、口腔ケア、生きがいを見直し、健康と意欲を育てる日々の習慣を考えるー
第2回『お酒は本当に少量なら体によいのか』
— これからの時間をひらくために、アルコールとの距離を考える —
少量飲酒、発がん性、依存、判断力低下、睡眠、転倒、人間関係への影響を整理します。飲む人を責めるのではなく、人生後半の自由を守るために、アルコールとの距離を考える記事です。
第3回『歩く力は、40代から静かに変わる』
— ロコモのはじまりに早く気づくために —
ロコモ、サルコペニア、フレイルの関係を整理し、筋力だけでなく、栄養、外出、人との関わりから考えます。毎日の歩行、たんぱく質、社会参加など、暮らしの中でできる予防を紹介します。
第4回『口腔ケアは、食べる・話す・笑う力を守る』
— 噛む力・飲み込む力・話す力を守るオーラルケア —
歯、歯周病、入れ歯、噛む力、飲み込む力、オーラルフレイルを扱います。口の健康が、食事、会話、人とのつながりに関わることを伝えます。
第5回『生きがいは体に何をしているのか』
— 生きる意欲、脳、生活リズム、人とのつながり —
生きがいを、精神論だけでなく、生活リズム、外出、会話、脳への刺激、役割意識として考えます。大きな夢ではなく、小さな灯りとしての生きがいを扱います。
第6回『これからの時間を整える朝習慣』
— 散歩、朝食、歯みがき、日光、挨拶、小さな予定 —
朝の時間を、未来の自分を支える習慣として整える実践記事です。読者が「明日の朝から少しやってみよう」と思える内容にします。


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