たんぱく質は、何から摂ればよいのか。

健康とからだ

― 肉・魚・大豆を組み合わせるエイジレスな食べ方 ―

年齢を重ねても、自分の足で歩き、行きたい場所へ出かけ、人生を楽しむ。

そのためには、筋肉や骨だけでなく、体全体をつくり、修復し、働かせる材料となる「たんぱく質」が欠かせません。

では、そのたんぱく質を、私たちは何から摂ればよいのでしょうか。

牛肉や豚肉には発がん性が指摘されていると聞きます。一方で、肉には良質なたんぱく質や鉄、亜鉛、ビタミンB12などが含まれています。

私自身、牛肉、豚肉、鶏肉が好きです。

だからこそ、「肉は体に悪いから食べない」と簡単に結論づけるのではなく、肉を楽しみながら健康を守るには、どのように食べればよいのかを考えてみたいと思います。

たんぱく質は、筋肉だけの栄養ではない

たんぱく質というと、筋肉をつけるための栄養というイメージがあります。

しかし、たんぱく質は筋肉だけでなく、皮膚、髪、爪、内臓、血液など、体のさまざまな部分をつくる材料です。

さらに、食べ物を消化する酵素、体の働きを調整するホルモン、感染などから体を守る免疫にも関わっています。

私たちの体は、完成した建物のように、ずっと同じ状態で止まっているわけではありません。

古くなったものを壊し、新しいものにつくり替える作業が、毎日繰り返されています。その材料となるのが、食事から摂るたんぱく質です。

特に年齢を重ねると、食事量や活動量の低下などから、筋肉が失われやすくなります。

単に長生きするだけでなく、自分で動ける時間を長く保つためにも、たんぱく質を不足させないことが大切です。

必須アミノ酸とは

食事から摂ったたんぱく質は、体内でアミノ酸に分解され、筋肉や皮膚、酵素などをつくる材料になります。

そのうち、体内で十分につくることができず、食事から摂る必要があるものを「必須アミノ酸」といいます。

肉、魚、卵、乳製品、大豆など、さまざまなたんぱく源を組み合わせることで、必要なアミノ酸をバランスよく摂りやすくなります。

たんぱく質は「量」だけでは決まらない

たんぱく質を考えるとき、「一日に何グラム摂ればよいか」に目が向きがちです。

もちろん、必要な量を摂ることは大切です。

しかし、同じ量のたんぱく質でも、何から摂るかによって、一緒に体へ入ってくる栄養素が異なります。

牛肉や豚肉からは、鉄、亜鉛、ビタミンB12などを摂りやすくなります。

魚からは、種類によってEPAやDHA、ビタミンDなども摂ることができます。

大豆や豆類からは、食物繊維、カリウム、大豆イソフラボンなども一緒に摂れます。

卵は調理しやすく、少量でも利用しやすい食品です。乳製品からは、たんぱく質とともにカルシウムなども摂れます。

つまり、たんぱく質だけを見るのではなく、

その食品が、たんぱく質と一緒に何を連れてくるのか

を見ることが大切です。

牛肉や豚肉は、食べてはいけないのか

肉について考えるとき、避けて通れないのが発がん性の問題です。

世界保健機関のがん研究機関であるIARCは、ハム、ソーセージ、ベーコンなどの加工肉を「人に対して発がん性がある」と分類しています。

また、牛肉、豚肉、羊肉などの赤肉は、「おそらく人に対して発がん性がある」と分類しています。

ここで注意したいのは、この分類が、

「一度でも食べれば、がんになる」

という意味ではないことです。

この分類は、主に発がん性を示す科学的証拠が、どの程度確かであるかを表しています。食べた人一人ひとりに、どのくらい大きな危険が生じるかを、そのまま示したものではありません。

加工肉がたばこと同じ分類に入っているからといって、加工肉を食べたときの危険の大きさまで、たばこと同じという意味でもありません。

しかし、証拠がある以上、無視してよいわけでもありません。

加工肉を頻繁に食べる生活や、牛肉や豚肉が毎日の主菜となっている食生活については、一度見直してみる価値があります。

赤肉と加工肉は分けて考える

赤肉と加工肉は、同じものではありません。

赤肉とは、一般に牛肉、豚肉、羊肉など、哺乳類の肉を指します。

加工肉は、保存性や風味を高めるために、塩漬け、発酵、燻煙などの加工を行った肉です。ハム、ベーコン、ソーセージ、サラミなどが該当します。

加工や燻煙によって、発がんに関係する可能性のある物質が生じることがあります。

また、肉を焦げるほどの高温で焼くと、ヘテロサイクリックアミンや多環芳香族炭化水素などが生成される可能性があります。

だからといって、焼肉やバーベキューを一切楽しめないわけではありません。

毎日のように焦げた肉を多く食べることと、ときどき家族や友人と焼肉を楽しむことは、同じではないからです。

大切なのは、日常の積み重ねです。

加工肉を毎日の主なたんぱく源にしない。

肉を黒く焦がし過ぎない。

焼く料理だけでなく、煮る、蒸す、ゆでる料理も取り入れる。

そうした小さな工夫が、肉を楽しみながらリスクを遠ざける方法になります。

肉には、肉のよさがある

肉には、良質なたんぱく質のほか、鉄、亜鉛、ビタミンB12などが含まれています。

特に赤肉に含まれるヘム鉄は、植物性食品に含まれる鉄に比べて、体に吸収されやすいという特徴があります。

豚肉にはビタミンB1が比較的多く、鶏肉は部位や皮の有無を選ぶことで、脂肪を抑えながらたんぱく質を摂りやすくなります。

年齢を重ね、食が細くなった人にとっては、少量でもたんぱく質や栄養を摂りやすい肉が役立つこともあります。

発がん性を恐れるあまり肉を極端に減らし、食事量そのものが減ってしまえば、筋肉や体力を失う方向へ進む可能性もあります。

肉を食べないことが、すべての人にとって健康的とは限りません。

大切なのは、肉を食卓から追い出すことではなく、肉だけに頼らないことです。

鶏肉は、赤肉とは別に考える

鶏肉は、IARCが示す赤肉には含まれていません。

皮を外した鶏むね肉やささみなどは、脂肪を抑えながらたんぱく質を摂りやすい食品です。

もも肉には脂肪がやや多いものの、食べやすく、料理に使いやすいというよさがあります。

ただし、鶏肉であっても、揚げ物や加工品ばかりになれば、脂肪や塩分を多く摂ることがあります。

食品の名前だけで健康かどうかを決めるのではなく、部位、加工方法、調理方法、食べる量まで含めて考える必要があります。

魚は、肉の代わりだけではない

魚は、肉を減らすための代用品ではありません。

魚には、魚にしかないよさがあります。

魚も良質なたんぱく質を含み、魚種によってはEPAやDHAなどの脂肪酸、ビタミンDなども摂ることができます。

EPAやDHAは、血液や血管の健康だけでなく、脳の働きとの関係についても研究されています。

一方で、魚にも課題があります。

大型魚に含まれる可能性がある水銀、干物や塩蔵品の塩分、海洋資源の減少、養殖に使われる飼料や環境負荷などです。

それでも、肉と魚を交互に食べることは、それぞれの栄養上の長所と弱点を補う方法になります。

魚の種類による栄養の違い、EPAやDHA、骨や脳との関係、水銀や水産資源については、別の記事で詳しく考えてみたいと思います。

大豆や豆類も、脇役ではない

日本の食卓には、納豆、豆腐、味噌、厚揚げ、高野豆腐など、身近な大豆食品がたくさんあります。

大豆は「畑の肉」と呼ばれることがありますが、肉の代用品としてだけ考える必要はありません。

大豆には、大豆独自のよさがあります。

たんぱく質とともに、食物繊維、カリウム、大豆イソフラボンなどを摂ることができます。

豆類や大豆食品を取り入れることで、肉を完全にやめなくても、肉の量や食べる回数を自然に調整できます。

例えば、ひき肉料理の一部を大豆や豆腐に替える。

肉だけの炒め物に厚揚げを加える。

朝食に納豆を取り入れ、夕食には魚や肉を食べる。

植物性たんぱく質と動物性たんぱく質を対立させるのではなく、それぞれのよさを食卓の中で生かしていけばよいのだと思います。

では、日々の食卓でどうすればよいのか

たんぱく質について考えると、栄養成分や摂取量の数字に目が向きます。

しかし、毎日の生活で大切なのは、完璧な献立をつくることではありません。

同じ食品ばかりに偏らず、少しずつ選択肢を増やすことです。

加工肉を毎日の主なたんぱく源にしない

ハムやソーセージは、手軽で保存もしやすい便利な食品です。

ただし、朝食や弁当に使うことで、気づかないうちに毎日食べることがあります。

卵、納豆、焼き魚、豆腐、蒸し鶏などと交代させれば、加工肉を食べる頻度を自然に減らせます。

一切食べないのではなく、毎日の定番にし過ぎないという考え方です。

牛肉や豚肉だけに偏らない

牛肉や豚肉をやめる必要はありません。

ただし、毎日の主菜が赤肉になっている場合は、その一部を魚、鶏肉、大豆料理、卵などに替えてみます。

今日は豚肉、明日は魚、その次は豆腐や鶏肉というように、主菜を回していけば、一つの食品に偏りにくくなります。

焦がし過ぎない

強火で黒く焦がす調理ばかりにせず、蒸す、煮る、ゆでる料理も取り入れます。

焼く場合も、必要以上に焦がさないようにします。

焼肉やバーベキューを楽しんではいけないということではありません。

楽しむ食事と、毎日の食事を分けて考えることが大切です。

一度にまとめず、毎食少しずつ摂る

夕食だけで大量の肉を食べるのではなく、朝に卵や納豆、昼に魚や鶏肉、夜に肉や豆腐というように分けます。

特に年齢を重ねると、一度にたくさん食べることが難しくなる場合があります。

毎食の中に、小さなたんぱく源を一つ加えることを意識すると続けやすくなります。

肉料理にも植物性食品を組み合わせる

肉だけを大皿いっぱいにするのではなく、野菜、きのこ、豆、海藻などを一緒に使います。

例えば、肉豆腐、豚汁、野菜と鶏肉の蒸し物、豆入りのひき肉料理などです。

肉の量を急に減らさなくても、料理全体のバランスを変えることができます。

食べられる量が減った人は、減らし過ぎない

食欲が落ちている人、体重が減っている人、筋力の低下を感じている人は、発がん性という言葉だけを恐れて、肉やたんぱく質を減らし過ぎないことも大切です。

肉、魚、卵、豆腐、乳製品などの中から、その人が食べやすいものを選びます。

持病や腎機能などによって適切な摂取量が異なる場合があるため、治療中の人は医師や管理栄養士に相談してください。

肉をやめるのではなく、肉だけに頼らない

肉には、良質なたんぱく質、鉄、亜鉛、ビタミンB12など、体を支える大切な栄養があります。

一方で、加工肉や赤肉を多く食べ続けることには、がんなどのリスクが指摘されています。

だからといって、肉を恐れて、食卓から追い出す必要はありません。

加工肉を毎日の中心にしない。

赤肉だけに偏らない。

魚、大豆・豆類、卵、乳製品などを組み合わせる。

調理方法を選び、毎食の中に少しずつたんぱく質を取り入れる。

一つの食品に完全な健康を求めるのではなく、それぞれの長所と弱点を補い合うことが大切です。

肉や魚を食べることは、命をいただくことでもあります。必要以上に買わず、無駄なく大切に食べることも、私たちにできる選択です。

これから世界の暮らしが豊かになり、多くの人が良質なたんぱく質を求めるようになれば、食料の確保と環境負荷の軽減を両立させる必要性は、さらに高まります。

AIやロボティクス、飼料の改良、発酵技術なども、肉や魚を単に減らすためではなく、より少ない負担で、よりよくつくるために生かされていくでしょう。

健康のためにも、地球の未来のためにも、答えは一つの食品だけにあるのではありません。

肉、魚、大豆、卵、乳製品。

それぞれのよさを知り、食卓の中で補い合う。

それが、健康なエイジレスライフを支える、無理のないたんぱく質の摂り方ではないでしょうか。

今日の小さな一歩は、いつもの肉をやめることではありません。

次に買い物へ行ったとき、肉と一緒に、魚、大豆、卵など、別のたんぱく源も一つ選んでみること。

食卓の選択肢が一つ増えることから、体と未来を守る食べ方が始まります。

参考資料

・世界保健機関(WHO)/国際がん研究機関(IARC)
「赤肉および加工肉の発がん性評価」

・厚生労働省
「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

・世界保健機関(WHO)
「Healthy diet」

・国際連合食糧農業機関(FAO)
「農業・食料システムと温室効果ガス排出に関する資料」

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