厚揚げは、主菜になれる

健康とからだ

「いつもの食品を、栄養と暮らしから再発見する」第1回
厚揚げは、身近で手頃な大豆製品です。栄養だけでなく、価格、食べごたえ、調理のしやすさから見直しました。

— 栄養、価格、食べごたえから考える大豆食品の実力 —

豆腐売り場に並んでいる厚揚げ。

煮物に少し入れたり、焼いて薬味をのせたりすることはあっても、「今日の主菜にしよう」と考えることは、あまり多くないかもしれません。

厚揚げは、豆腐を油で揚げた食品です。そのため、「豆腐より脂っこい」「健康を考えるなら普通の豆腐の方がよい」と思われることもあります。

しかし、栄養成分を改めて見てみると、厚揚げには豆腐とは異なる個性があります。

たんぱく質やカルシウムなどを比較的少ない量から摂りやすく、食べごたえがあり、野菜と組み合わせれば主菜にもなります。価格も肉や魚と比べて手に取りやすいことが多く、家計を守りながら食事の選択肢を増やしてくれる食品です。

今回は、いつも見ている厚揚げを、栄養と暮らしの両面からもう一度見直してみましょう。

先に、この記事のポイント

厚揚げは、豆腐よりたんぱく質やカルシウムを摂りやすい一方、脂質とエネルギーも多い食品です。

つまり、豆腐の「上位版」でもなければ、不健康な揚げ物でもありません。

  • 少量で栄養とエネルギーを摂りたい
  • 肉以外の主菜を増やしたい
  • 食べごたえのある大豆料理を作りたい

そんなときに、厚揚げの個性が長所になります。

一方、あっさり食べたい日や脂質を抑えたい日には、豆腐や魚などを選ぶ。食品の特徴を知って使い分けることが、バランスのよい食事につながります。

厚揚げは、どのような食品でしょう

厚揚げは、豆腐の表面を油で揚げ、中には豆腐らしい食感を残した食品です。「生揚げ」とも呼ばれます。

薄く切った豆腐を中まで揚げる油揚げとは異なり、厚揚げには白く柔らかな内部が残っています。

そのため、

  • 表面には香ばしさがある
  • 中は柔らかい
  • 煮ても炒めても崩れにくい
  • 味が染み込みやすい
  • 豆腐より食べごたえがある

という特徴があります。

豆腐の食べやすさと、揚げ物の満足感を併せ持っているのです。

豆腐と比べると、何が多いのでしょう

日本食品標準成分表をもとに、100g当たりの標準的な成分を比べてみます。

100g当たり絹ごし豆腐木綿豆腐厚揚げ
エネルギー56kcal73kcal143kcal
たんぱく質5.3g7.0g10.7g
脂質3.5g4.9g11.3g
カルシウム75mg93mg240mg
1.2mg1.5mg2.6mg

厚揚げは木綿豆腐と比べても、たんぱく質が多く含まれています。カルシウムや鉄も摂りやすいことが分かります。

一方で、脂質とエネルギーも増えています。

これは、厚揚げが特別な栄養成分を加えた食品だからではありません。豆腐より水分が少なくなり、表面に油を含むことで、栄養とエネルギーが同じ重量の中に凝縮されているためです。

なお、豆腐製品の成分は、原料、凝固剤、製造方法、含まれる水分などによって違います。表の数値は商品の優劣を決めるものではなく、それぞれの個性を知る目安として考えましょう。

年齢を重ねた食卓で生きる三つの長所

1.少量でも、たんぱく質を摂りやすい

年齢を重ねると、若い頃より食事量が減ることがあります。

肉を重く感じたり、一度にたくさん食べられなくなったりしても、筋肉や体を維持するために、たんぱく質は引き続き必要です。

厚揚げは100gで約10gのたんぱく質を含みます。商品によって異なりますが、小さめの厚揚げ一枚ほどでも、ある程度のたんぱく質を確保できます。

鶏肉や魚ほどたんぱく質が多いわけではありません。しかし、野菜、卵、魚、汁物などと組み合わせることで、一食を整える力は十分にあります。

2.カルシウムを補う選択肢になる

厚揚げにはカルシウムも含まれます。

カルシウムは骨や歯の材料となりますが、骨の健康はカルシウムだけで決まるものではありません。たんぱく質、ビタミンD、適度な運動なども関係します。

厚揚げを食べれば骨の問題が解決するわけではありませんが、日常の食事からカルシウムを補う選択肢の一つになります。

製品によってカルシウム量には差があるため、詳しく知りたい場合は、パッケージの栄養成分表示も確認してみましょう。

3.食べごたえがあり、主菜にしやすい

厚揚げの大きな長所は、栄養価だけではありません。

豆腐より崩れにくく、焼く、煮る、炒めるといった調理がしやすいうえ、香ばしさと厚みがあります。

例えば、

  • 厚揚げとキャベツ、きのこの炒め物
  • 厚揚げと小松菜の煮物
  • 焼き厚揚げの大根おろし添え
  • 厚揚げと野菜のあんかけ
  • 厚揚げ入りの具だくさん味噌汁

などにすれば、食卓の中心になる一皿を作れます。

肉を完全に使わず厚揚げを主役にしてもよいですし、肉を少量に減らし、厚揚げと野菜で量を補ってもよいでしょう。

「肉か、厚揚げか」と二者択一にするのではなく、肉の一部を厚揚げに替えるだけでも、食事の幅が広がります。

安いからではなく、価値があるから選ぶ

厚揚げは、地域や商品による違いはありますが、肉や魚より比較的手頃な価格で購入できることが多い食品です。

しかし、単に「肉を買えないときの節約食材」と考えるのは、少しもったいない気がします。

厚揚げには、

  • たんぱく質を摂りやすい
  • 食べごたえがある
  • 主菜に使える
  • 野菜と合わせやすい
  • 和風にも中華風にも使える
  • 調理に時間がかかりにくい

という実力があります。

安いから仕方なく選ぶのではなく、栄養、調理のしやすさ、満足感を考えて、積極的に選べる食品です。

厚揚げの弱点は、別の食品で補えばよい

どのような食品にも長所と短所があります。厚揚げも万能ではありません。

大切なのは、短所を理由に避けることではなく、別の食品や調理法で補うことです。

脂質とエネルギーを抑えたいとき

厚揚げは油で揚げているため、豆腐より脂質とエネルギーが多くなります。

体重を調整しているときや、あっさりした食事にしたいときには、

  • 木綿豆腐
  • 絹ごし豆腐
  • 焼き豆腐
  • 白身魚
  • 鶏むね肉

などが代わりになります。

表面に熱湯をかけたり、キッチンペーパーで油を押さえたりすると、油の風味や重さを和らげることもできます。ただし、油抜きをしても、厚揚げに含まれる脂質がすべてなくなるわけではありません。

食物繊維を増やしたいとき

厚揚げは大豆製品ですが、それだけで十分な食物繊維を摂れるわけではありません。

  • 野菜
  • きのこ
  • 海藻
  • 豆類
  • おから

などを一緒に使いましょう。

厚揚げと野菜の炒め物や、きのこあんかけにすると、厚揚げに少ない食物繊維を補いやすくなります。

塩分を控えたいとき

厚揚げそのものより、煮物や炒め物の濃い味付けによって塩分が増えることがあります。

だし、酢、しょうが、ねぎ、こしょう、七味などを生かせば、調味料を増やしすぎずに味に変化をつけられます。

厚揚げは味を吸いやすいため、濃い煮汁をたっぷり含ませるより、表面を香ばしく焼き、薬味を添える食べ方もよいでしょう。

厚揚げだけに決めなくてもよい

厚揚げに優れたところがあると知ると、「これからは厚揚げを毎日食べよう」と思うかもしれません。

しかし、バランスのよい食事は、一つの優秀な食品だけでは作れません。

あっさり食べたい日には豆腐。
魚の脂質を摂りたい日には青魚。
食物繊維を増やしたい日には豆や野菜。
しっかり食べたい日には肉や卵。

そして、少ない量でも栄養と満足感を得たい日には厚揚げ。

食品の長所と短所を知り、その日の体調、食欲、家計、ほかの料理との組み合わせによって選ぶ。それが、食事を整えるということではないでしょうか。

知っている食品を、もう一度見直してみる

厚揚げは、新しく登場した健康食品ではありません。昔から身近にあり、何度も見てきた食品です。

それでも、栄養や使い方を学び直すと、

豆腐を揚げた脇役ではなく、主菜になれる大豆食品

という別の姿が見えてきます。

年齢を重ねることは、知識を増やすだけでなく、これまで当たり前だと思ってきたものを、もう一度見直す機会でもあります。

身近な食品の個性を知る。
長所を生かし、足りない部分は別の食品で補う。
そして、自分の暮らしに無理なく取り入れる。

今日の食卓に厚揚げを一皿加えることも、これからの体を整える、小さな選び直しになるのかもしれません。

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参考資料

  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年・食品成分データベース」
  • 農林水産省「食事バランスガイド」
  • 農林水産省「食材を知ろう! 大豆編」

※食品成分は製品や製造方法によって異なります。治療中の病気があり、たんぱく質、脂質、カリウムなどの摂取について指示を受けている方は、医師や管理栄養士の助言を優先してください。

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