「いつもの食品を、栄養と暮らしから再発見するシリーズ」
食感、栄養、多彩な調理法から再発見する緑の野菜
ブロッコリーが好きです。
少し歯ごたえを残してゆでた、あの独特の食感。スープに入れれば、やわらかくなりながらも存在感があります。カレーライスの上に添えても、濃い味の中に緑の風味が加わり、よく合います。
けれども、考えてみると、私はブロッコリーについてほとんど知りませんでした。
体によい野菜らしい。
緑色だから、ビタミンも含まれていそうだ。
そのくらいの理解で食べていたのです。
そこで今回は、いつものブロッコリーを、栄養と暮らしから見直してみます。
「いつもの食品を、栄養と暮らしから再発見するシリーズ」、ブロッコリー編です。
食べているのは、花が咲く前のつぼみ
ブロッコリーの、ふさふさした緑色の部分。
私たちが食べているのは、葉の集まりではありません。これから花を咲かせようとしている、小さなつぼみの集まりです。
買ってからしばらく置いておくと、緑色のつぼみが開き、黄色い花が見えることがあります。普段は粒のように見えていた一つひとつが、花になる部分だったのです。
今日の「へえー」
ブロッコリーの房は、花が咲く前の小さなつぼみの集まりです。
そう思って眺めると、いつものブロッコリーが少し違って見えてきます。
ビタミンだけではない、頼れる野菜
ブロッコリーには、ビタミンC、葉酸、βカロテン、カリウム、食物繊維などが含まれています。
ビタミンCは、皮膚や血管などをつくるコラーゲンの生成に関係する栄養素です。葉酸は、細胞が新しくつくられる過程を支えます。βカロテンは、体内で必要に応じてビタミンAに変わり、皮膚や粘膜の健康に関係します。
食物繊維は、腸内環境や便通を整えるうえで役立ちます。
さらに、野菜としては、たんぱく質も比較的多く含まれています。
ただし、ブロッコリーをたくさん食べれば、肉、魚、卵、大豆製品が必要なくなるわけではありません。
ブロッコリーは、主にビタミン、ミネラル、食物繊維を補い、主菜を支える野菜として考えると分かりやすいでしょう。
卵や鶏肉、鮭、厚揚げなどと組み合わせれば、食事全体を整えやすくなります。
茎も、おいしく食べられます
ブロッコリーを切るとき、房だけを使い、太い茎を捨ててしまうことがあります。
しかし、茎も食べられます。
外側の硬い皮を厚めにむくと、中にはやわらかく、ほんのり甘みのある部分があります。
薄切りや細切りにして、炒め物、スープ、味噌汁、カレー、シチューなどに加えられます。房とは違う、少しコリッとした食感も楽しめます。
ブロッコリーを一株買ったら、房だけでなく茎まで使ってみる。
食べられる部分を知ることは、食品を無理なく使い切ることにもつながります。
ブロッコリーは、ゆでるだけではありません
ブロッコリーというと、まず塩を加えた湯でゆでることを思い浮かべます。
もちろん、ゆでてもおいしい野菜です。
しかし、蒸す、焼く、炒める、揚げるなど、調理法を変えると食感や風味も変わります。
ゆでる
家庭で最もなじみのある方法です。
全体に火が通りやすく、やわらかな食感になります。ゆですぎると房が崩れ、水っぽくなりやすいため、少し歯ごたえが残るところで引き上げます。
水に触れて加熱するため、水溶性のビタミンなどの一部は、ゆで汁へ移ります。
だからといって、ゆでてはいけないわけではありません。食べやすく、おいしく仕上がるなら、十分に役立つ調理法です。
蒸す
少量の水で蒸したり、蒸し器を使ったりする方法です。
湯の中に入れないため、水っぽくなりにくく、ブロッコリーの味や食感を残しやすいのが特徴です。
調理方法を比較した研究では、蒸す方法は、ゆでる、炒めるなどに比べて、グルコシノレート(次章で解説)と呼ばれる成分の減少が比較的少なかったという結果も報告されています。
電子レンジで少量の水とともに加熱する方法も、日常では手軽です。大きさをそろえて切り、加熱しすぎないよう、途中で様子を見ます。
焼く
フライパン、魚焼きグリル、オーブンなどで焼くと、ゆでたときとは違う香ばしさが生まれます。
房の先が少し焦げるくらいに焼くと、外側には香ばしさが加わり、内側には甘みと水分が残ります。
少量の油を絡め、塩を控えめに振るだけでも一品になります。肉や魚と一緒に焼けば、付け合わせではなく、同じ皿を構成する野菜になります。
カレーのトッピングにも、ゆでたものだけでなく、焼いたブロッコリーがよく合いそうです。
炒める
炒めると、油の風味が加わり、食べごたえが出ます。
茎は房より薄く切り、先に加熱すると、火の通りをそろえやすくなります。鶏肉、豚肉、卵、きのこ、厚揚げなどとも合わせやすい調理法です。
硬さが気になる場合は、少量の水を加えてふたをし、蒸し焼きにすると食べやすくなります。
揚げる
ブロッコリーは、天ぷらやフリットにもできます。
房の細かな部分に衣がつき、外はカリッと、中はほくっとした食感になります。油を使うためエネルギーは増えますが、揚げ物だから悪いと決めつける必要はありません。
毎日の基本にするというより、食べ方の変化を楽しむ一品として取り入れればよいでしょう。
大切なのは、栄養を一つも失わない「完璧な調理法」を探すことではありません。
歯ごたえを楽しみたい日は、短めにゆでる。
味を濃く感じたい日は、蒸す。
香ばしさがほしい日は、焼く。
食べごたえを出したい日は、炒める。
ときには、揚げて楽しむ。
調理法を選べること自体が、ブロッコリーの魅力です。
「若返り成分」とも呼ばれるスルフォラファン
ブロッコリーについて調べると、「スルフォラファン」という名前に出会います。
ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜には、グルコラファニンなどのグルコシノレートが含まれています。切る、かむといった過程で、植物が持つ酵素の働きにより、スルフォラファンなどへ変化します。
スルフォラファンは、体が酸化ストレスなどから自らを守る仕組みに関係する「Nrf2」という経路を活性化すると考えられています。
老化には、酸化ストレス、慢性的な炎症、細胞内の修復機能、ミトコンドリアの変化など、さまざまな要因が関わります。スルフォラファンが、これらに関係する仕組みへ働きかける可能性が、細胞や動物を使った研究で示されています。
そのため、インターネットなどでは「若返り成分」「老化を防ぐ成分」と紹介されることがあります。
ここは、少し慎重に受け取りたいところです。
動物を使った研究では、加齢に伴う心臓や筋肉の機能低下を抑えたとする報告があります。高齢者を対象に、認知機能などへの影響を調べた小規模な研究もあります。
しかし現時点では、ブロッコリーを食べると、人が若返る。老化の進行を確実に遅らせる。
と確認されたわけではありません。
細胞や動物で見つかった働きが、そのまま人の健康長寿につながるとは限りません。食事から取る量と、研究で使われる抽出物やサプリメントの量も同じではありません。
「若返り効果があるらしい」という話には、研究されている理由があります。一方で、人に対する長期的な効果を断定できるほどの証拠は、まだそろっていません。
期待を膨らませすぎず、
ブロッコリーには興味深い成分が含まれ、その働きについて研究が続いている。
という程度に受け止めるのがよさそうです。
加熱すれば、意味がなくなるの?
スルフォラファンの生成に関わる酵素は、加熱の影響を受けます。また、水に溶ける成分もあるため、長時間ゆでれば成分の一部は減少します。
ただし、調理時間や温度によって結果は変わり、蒸す、ゆでる、電子レンジ加熱などを単純に順位づけすることはできません。
スルフォラファンを少しでも多く取ろうとして、加熱方法に神経質になりすぎる必要もないでしょう。
生に近い硬さが苦手で食べなくなるより、ゆでても、焼いても、スープに入れても、おいしく食べ続ける方が現実的です。
調理によって失われるものがある一方、やわらかくなって量を食べやすくなったり、ほかの食品と組み合わせやすくなったりする利点もあります。
ブロッコリーは冷凍できる?
ブロッコリーは冷凍できます。
小房に分け、硬めにゆでるか、電子レンジで短時間加熱します。水気をよく切り、冷めてから一回分ずつ保存袋に入れて冷凍します。
使うときは、凍ったままスープ、炒め物、カレー、シチューなどへ加えられます。
解凍後は生鮮品よりやわらかく、水っぽく感じる場合があります。そのため、歯ごたえを楽しむ料理より、加熱料理に向いています。
市販の冷凍ブロッコリーも、必要な分だけ使える便利な食品です。
生鮮品と冷凍品を優劣で分けず、
食感を楽しみたい日は生鮮品。
すぐ使いたい日は冷凍品。
と使い分ければよいと思います。
好きな食品を、少し深く知ってみる
私は、ブロッコリーについてほとんど知りませんでした。
それでも、あの食感が好きでした。
スープに入れるのも、カレーに添えるのも好きでした。
調べてみると、房は花が咲く前のつぼみであり、茎まで食べられること、ゆでるだけでなく、蒸す、焼く、炒める、揚げるという食べ方があることが分かりました。
スルフォラファンという興味深い成分もあります。ただし、一つの成分に若返りを任せるのではなく、さまざまな食品をバランスよく食べることが基本です。
知らなくても、好きだから食べていた。
そこに少し知識が加わると、捨てていた茎を使ったり、いつもとは違う方法で焼いてみたり、肉、魚、卵、大豆製品との組み合わせを考えたりできます。
食生活を整えることは、難しい栄養学をすべて覚えることではありません。
好きな食品を一つ、少し深く知ってみる。
そして、次の食事で一つ試してみる。
その小さな積み重ねが、これからやりたいことへ向かう、からだの土台を支えてくれるのだと思います。
「いつもの食品を、栄養と暮らしから再発見するシリーズ」
一つの食品ですべての栄養を取ることはできません。けれども、それぞれの特徴を知れば、食卓で上手に組み合わせることができます。
特別な食品を探すより、いつもの食品を知り直す。
その小さな学びと実践を、続けられる食生活と、これからやりたいことへ向かう力につなげていきます。


コメント