第6回 お墓・お寺・葬儀にかかるお金 『人生後半の自由を守るマネーリテラシー』

お金と備え

― 感謝と見栄を分けて考える ―

お墓・お寺・葬儀にかかるお金は、単なる支出ではありません。亡くなった人への感謝や、残された家族が気持ちに区切りをつけるための大切なお金でもあります。だからこそ、安ければよい、高ければ立派というものでもありません。感謝に使うお金と、見栄や不安でふくらむお金を分けて考えながら、自分たちに合った弔い方を選ぶことが大切です。

お金は、残すだけでなく、どう使うかも大切

マネーリテラシーというと、節約、貯蓄、投資、保険の見直しを思い浮かべるかもしれません。

もちろん、お金を守ることは大切です。

けれど、お金は必要以上にため込むためだけにあるものではありません。

自分や家族が安心して暮らし、人生を有意義に楽しみ、大切な場面で心を込めて使うためのものでもあります。

その意味で、お墓・お寺・葬儀にかかるお金は、人生後半のマネーリテラシーとして避けて通れないテーマです。

葬儀や供養は、単なる支出ではない

葬儀やお墓、法要にかかるお金は、単なる消費ではありません。

亡くなった人への感謝。
家族が気持ちに区切りをつける時間。
親族が集まり、思い出を分かち合う場。
これまでの人生に敬意を表す営み。

そこには、お金だけでは測れない意味があります。

だから、安ければよいという話ではありません。

小さな葬儀でも、大きな葬儀でも、家族が納得し、感謝を込められる形であれば、それぞれに意味があります。

大切なのは、金額の大きさではなく、そのお金が何のために使われているかです。

感謝に使うお金と、見栄で増えるお金を分ける

葬儀やお墓のお金で難しいのは、感謝と見栄が混ざりやすいことです。

「きちんと送ってあげたい」
「親族に失礼のないようにしたい」
「故人に恥ずかしくない形にしたい」

こうした気持ちは自然なものです。

一方で、

「これくらいしないと世間体が悪い」
「親族に何か言われるかもしれない」
「隣のお墓より見劣りするのは嫌だ」
「高いものを選ばないと供養にならない気がする」

という不安から、支出がふくらむこともあります。

感謝のために使うお金は、心を支えます。

しかし、見栄や不安だけで増えるお金は、残された家族の暮らしを苦しくすることがあります。

葬儀を小さくしても、感謝が小さくなるわけではありません。

反対に、家族が納得して大きな葬儀を選ぶなら、それも一つの形です。

問題は、本人や家族の希望ではなく、不安や世間体だけで決めてしまうことです。

葬儀費用は、総額だけでなく中身を見る

葬儀の費用は、一つの金額だけで判断しにくいものです。

葬儀社へ支払う費用のほかに、式場使用料、火葬料、祭壇、棺、花、遺影、飲食、返礼品、香典返し、お布施、戒名、法要など、さまざまな費用が関係します。

「基本プラン」と書かれていても、必要なものがすべて含まれているとは限りません。

人数が増えれば、飲食や返礼品の費用も増えます。

家族葬であっても、祭壇や式場、宗教者への謝礼などによって費用は変わります。

家族葬とは、人数を絞った葬儀という意味であり、必ず安い葬儀という意味ではありません。

葬儀を考えるときは、総額だけでなく、

・何が含まれているか
・何が別料金か
・人数が増えた場合にいくら増えるか
・お布施や戒名は別に必要か
・返礼品や会食をどうするか

を確認することが大切です。

悲しみの中で急いで決めると、冷静な比較が難しくなります。

だからこそ、元気なうちに、おおまかな希望や予算を家族に伝えておくことが、残された人への配慮になります。

お寺との関係は、早めに確認しておく

菩提寺がある場合、葬儀や納骨、戒名、法要について、お寺との関係が関わってきます。

普段あまり付き合いがない場合でも、お墓が寺院墓地にあるなら、葬儀や納骨のときに確認が必要になることがあります。

特に、家族葬、直葬、無宗教葬、永代供養、墓じまいなどを考える場合は、後から行き違いが起きないように、早めに相談しておきたいところです。

お布施や戒名料は、一般の商品価格とは違い、金額が分かりにくいことがあります。

聞きにくいと感じるかもしれませんが、家族が困らないためには、事前に目安を確認することも大切です。

お寺との関係を大切にすることと、内容や費用を確認することは矛盾しません。

むしろ、あいまいなままにせず、納得して続けるために必要なことです。

お墓は、建てた後もお金と管理が続く

お墓も、建てれば終わりではありません。

墓石代、永代使用料、管理料、納骨費用、法要、掃除、将来の修繕などが関係します。

遠方に住んでいる子どもが墓参りを続けられるか。
将来、誰が管理するのか。
管理料や法要費用を誰が負担するのか。

ここを考えずにお墓を残すと、次の世代に重い負担を残すことがあります。

お墓を守り続けることに意味を感じ、家族も納得しているなら、それは大切な選択です。

一方で、継ぐ人がいない、子どもに負担を残したくない、遠方で管理できないという場合には、別の選択肢を考えることも必要です。

弔い方には、いくつかの選択肢がある

今は、従来のお墓や法要だけでなく、さまざまな弔い方を選べる時代になってきました。

たとえば、永代供養、納骨堂、樹木葬、墓じまい、離檀、仏壇の小型化や処分、散骨などです。

大切なのは、「どれが一番よいか」を一律に決めることではありません。

自分たちの家族構成、住まい、収入、信仰や気持ちに合うかどうかで考えることです。

永代供養

永代供養は、寺院や霊園が遺骨の管理や供養を行う仕組みです。

継ぐ人がいない、子どもに負担を残したくないという場合の選択肢になります。

ただし、「永代」といっても、一定期間は個別に安置され、その後は合祀される形など、内容は施設によって異なります。

納骨堂

納骨堂は、屋内型の納骨施設です。

お参りしやすい場所にあることも多く、都市部でも利用しやすいのが特徴です。

一方で、管理費や契約期間、将来の扱いは施設によって違うため、内容をよく確認する必要があります。

樹木葬

樹木葬は、墓石の代わりに樹木や草花を墓標とする供養の形です。

自然に近い印象があり、継承者を前提にしない形もあります。

ただし、個別型、合祀型など内容はさまざまで、後から遺骨を取り出せるかどうかなども確認が必要です。

墓じまい・離檀

今あるお墓を維持できなくなったときには、墓じまいを考える場合があります。

墓石の撤去、遺骨の移転、親族との相談、お寺や霊園との調整などが関わります。

離檀についても、感情的に進めるのではなく、事情を丁寧に伝え、話し合いながら進めることが大切です。

仏壇を置かない・小さくする・処分する

今の住宅事情では、大きな仏壇を置くことが難しい家庭もあります。

仏壇を持たない、小さな仏壇にする、写真や花を飾る小さな祈りの場所をつくるという形もあります。

今ある仏壇を処分する場合には、菩提寺や仏具店に相談し、閉眼供養などを行ってから整理することがあります。

散骨など

散骨を希望する人もいます。

ただし、どこでも自由に行えるわけではなく、地域や事業者によって方法や注意点が異なります。

また、遺骨を受け取らない選択なども、火葬場や自治体によって扱いが違う場合があります。

こうした選択肢は、費用だけで決めるのではなく、後悔しないか、家族が納得できるかを大切にしたいところです。

墓じまいは、お金と気持ちの整理

お墓を維持できなくなったとき、墓じまいを考える家庭もあります。

墓じまいには、墓石の撤去、遺骨の移転、改葬の手続き、寺院や霊園との相談、親族への説明などが関わります。

費用だけでなく、気持ちの整理も必要です。

「先祖に申し訳ない」と感じる人もいるでしょう。

しかし、無理にお墓を残し、誰も管理できなくなるより、家族が納得できる形に整えることも、一つの供養です。

大切なのは、急に決めないことです。

親族、お寺、霊園管理者と話し合い、費用と手続き、遺骨の移転先を確認します。

墓じまいは、過去を捨てることではありません。

これからも無理なく手を合わせられる形に変えることだと考えたいところです。

仏壇や法要も、暮らしに合わせて考える

以前は、家に仏間があり、大きな仏壇を置き、親族を招いて法要を行う家庭も多くありました。

しかし、現在の住宅事情では、仏間がない家も珍しくありません。

マンションや小さな住宅では、大きな仏壇を置くことが難しい場合もあります。

仏壇を持たない、写真や小さな祈りの場所を設ける、小型の仏壇を選ぶなど、形は変わってきています。

法要についても、すべてを従来通りに行う家庭もあれば、回数や規模を小さくする家庭もあります。

大切なのは、形を整えることだけではありません。

家族が故人を思い出し、感謝できる時間を持てるかどうかです。

形式を大きくすることが、必ずしも心の深さを示すわけではありません。

本人の希望を聞いておくことが、家族を助ける

葬儀やお墓のことは、話しにくいテーマです。

しかし、何も決めないままにしておくと、残された家族が短い時間で多くの判断をしなければなりません。

本人が、

・葬儀の規模
・宗教儀礼の希望
・誰に知らせたいか
・お墓をどうしたいか
・使ってよい費用の目安
・遺影に使ってほしい写真
・香典や供花をどうするか

を伝えておくと、家族の迷いは少なくなります。

これは、死を急ぐ話ではありません。

残された家族に、判断の重荷を背負わせすぎないための準備です。

エンディングノートに書いておく、家族と少しずつ話す、菩提寺や葬儀社に事前相談する。

できることから始めれば十分です。

まとめ――最後のお金を、暮らしを壊さない感謝に使う

お墓・お寺・葬儀にかかるお金は、人生の最後に関わる大切なお金です。

それは、単なる節約の対象ではありません。

亡くなった人への感謝、家族の区切り、心を整える時間のために使うお金でもあります。

だからこそ、安さだけで決める必要はありません。

一方で、高ければ感謝が深いというものでもありません。

大切なのは、感謝のために使うお金と、見栄や不安で増えてしまうお金を分けることです。

葬儀を小さくしても、感謝が小さくなるわけではありません。

お墓の形を変えても、故人を忘れることにはなりません。

仏壇や法要を暮らしに合わせて整えても、心まで失うわけではありません。

お金は、ただ残すためだけのものではありません。

今を生きる人が、安心して暮らし、人生を有意義に楽しみ、大切な場面で心を込めて使うためのものです。

最後のお金も、見栄ではなく、感謝に使う。

そして、残された家族の暮らしを苦しめすぎない形に整える。

それが、人生後半の自由を守るマネーリテラシーなのだと思います。

第1回 人生後半の自由を守るマネーリテラシー『見栄と不安からの支出を選び直す
第2回 高い車が悪いのではない。固定費化は、自由を削る。見栄ではなく、人生を運ぶ車を選ぶ
第3回 保険は安心を買うもの、入りすぎると暮らしを削る。
第4回 投資信託(インデックスファンド)は味方にもなる。手数料には注意
第5回 家は建てた後もお金がかかる
第6回 お墓・お寺・葬儀にかかるお金

弔いのお金を考えるときの五つの確認

1.その支出は、感謝のためですか。それとも不安や見栄でしょうか。

2.葬儀費用の総額だけでなく、中身を確認していますか。

3.お墓を将来、誰が管理するのか見通しがありますか。

4.永代供養、納骨堂、樹木葬など、別の選択肢を知っていますか。

5.本人の希望を、家族で少しでも共有できていますか。

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